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2024.04.24
メタゲームのゲーム依存症対策
本日は、eスポーツ×就労継続支援事業所として「ゲーム依存」という概念と、メタゲームでの取り組みについてお話させていただきます。
「プロゲーマー」と「ゲーム依存症患者」
就労訓練としての「ゲーム」を取り扱うにあたって、職業としてのゲームプレイヤーを考えてみます。例えば、ゲームの腕前を高めることで人々の注目を集め、それによってスポンサーから収入を得る「プロゲーマー」や、近年盛り上がりを魅せる動画配信サイトによるライブ配信から収入を得る「ストリーマー」という人たちがいます。
この人たちはどちらも、一日に数時間、さらには十数時間ゲームをプレイすることで収入を安定させ生活を送っています。明らかに普通の人よりはとても長い時間をゲームに費やしていますが、職業としてしっかりと社会的な理解を得ています。
むしろ、eスポーツ市場というくくりから見れば、今かなり勢いのある市場で、公的機関でも活性化が議論されているくらいです。
- 財務省資料 https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202305/202305j.pdf
- 経済産業省資料 https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/contents/2022generationzadreport.html
しかし、一方で「ゲーム依存症」と呼ばれる人々が存在します。ゲームにのめり込みすぎることで社会生活が疎かになり、それが障害として扱われる事例になります。
どちらも同じくゲームが生活の大きな割合を占めているのにも関わらず、片方はキチンとした職業になっている一方で、片方は病気や障害として扱われているという現実があります。
これは一体、何故なのでしょうか。
「依存症」の概念
これを理解するには、何が依存で何が依存でないのか、という線引きを理解する必要があります。
厚生労働省の記述を引用します。
>Q.依存症ってなに?
> A.特定の何かに心を奪われ、「やめたくても、やめられない」状態になることです。
「ゲーム依存」という言葉もこの文脈に存在します。
依存症についてもっと知りたい方へ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
>インターネット・ゲ一ム障害(Internet Gaming Disorder, IGD)
① (ネット)・ゲームに関する行動(頻度、開始・終了時間、内容など)がコン
トロールできない
② (ネット)・ゲーム優先の生活となり、それ以外の楽しみや日常行う責任
のあることに使う時間が減る
③ (ネット)・ゲームにより個人、家族、社会、教育、職業やそのほかの重
要な機能分野において著しい問題を引き起こしているにもかかわらず
ゲームがやめられない
上記が12ヶ月以上続いている状態
スライド 1 (mhlw.go.jp)
“問題は誰かが困ることです”これは、先ほど登場した(依存症についてもっと知りたい方へ |厚生労働省 (mhlw.go.jp))こちらのページに記載されている言葉です。
ゲームをプレイする事によって自分や周りの他者が困っている場合に、初めてゲームのプレイがゲーム依存症として判断されるということになります。
では、上記の内容を踏まえて、職業としてのゲーマーはゲーム依存症に分類されるのかという事について考えてみます。
依存にならないゲームとは
話を簡略化するために、さきほとから登場している 依存症についてもっと知りたい方へ |厚生労働省 (mhlw.go.jp) この文章からゲーム依存についての分類を行います。
>依存症には主に 2種類あります
>依存症とはやめたくてもやめられない状態に陥ることですが、その種類は大きく分けて2種類あります。
「物質への依存」と「 プロセスへの依存」です。>「物質への依存」について:
アルコールや薬物といった精神に依存する物質を原因とする依存症状のことを指します。
依存性のある物質の摂取を繰り返すことによって、以前と同じ量や回数では満足できなくなり、
次第に使う量や回数が増えていき、使い続けなければ気が済まなくなり、自分でもコントロールできなくなってしまいます(一部の物質依存では使う量が増えないこともあります)。>「プロセスへの依存」について
依存症についてもっと知りたい方へ |厚生労働省 (mhlw.go.jp)
物質ではなく特定の行為や過程に必要以上に熱中し、のめりこんでしまう症状のことを指します。
ゲーム自体はなにか物質を摂取しているわけではなく「行為」に該当するので、上記の定義から言うとゲーム依存症はプロセスへの依存と言えます。
プロセスへの依存と定義するならば、問題となるのはその行為自体の性質という事になるはずです。
メタゲームの解釈としては、職業ゲーマーがやっているゲームと、ゲーム依存症患者がやっているゲームには大きな違いがあると考えています。それは、ゲーム自体が社会生活を助けているかどうかというところです。
職業ゲーマーにとってのゲームは、生活を支える収入源でありそれ自体が社会参画のきっかけになっています。職業として成り立っているので、チーム等に所属していれば当然そこで人との交流もありますし、配信を行っていれば見に来ている人との交流の機会もあります。中には家庭を築いて子供がいる人もいます。
これに限った話でなくても、SNS等を通じてオンライン上で友人同士の交流を持ちながらゲームをプレイするということは、若年層の間ではポピュラーなことです。
一方で、そうした社会性の獲得といったゲームがもたらすメリットから逸脱し、ゲーム自身の楽しさに熱中しすぎるあまりに他者に迷惑をかけてしまうようになると、ゲームは「ゲーム依存」を引き起こしてしまうものになると言えます。
例えば、度々未成年が保護者のクレジットカードを無断利用し、ソーシャルゲームのガチャ(確立によって、ゲーム内のアイテムが排出される仕組みのこと。)に数万円を超える高額な課金を行ってしまう事例などが一番有名でしょうか。
次項でメタゲームがどのようにゲームを通して社会生活を支援しているかというポイントをお話させていただきます。
eスポーツの支援的価値
メタゲームで取り扱うゲームは、ゲームの中でも「eスポーツ」というものに分類されます。
定義を文部科学省の資料から引用します。
>eスポーツとは、「エレクトロニック・スポーツ」の略で、広義には、電子機器を用い て行う娯楽、競技、スポーツ全般を指す言葉であり、コンピューターゲーム、ビデオゲー ムを使った対戦をスポーツ競技として捉える際の名称
参考7 eスポーツについて (mext.go.jp)
加えて、メタゲームで重視しているポイントとして
・ユーザーの必要最低限の金銭的負担は、ゲーム自体の購入及び媒体の使用料(ネットワーク利用料など)のみで完結する。
・ゲーム内での競技性は、ゲーム内のプレイの積み重ねのみで担保される。
という2点が挙げられます。度々ゲームでは、「pay to win」と呼ばれるユーザの課金額によって勝敗が決まってしまう等の要素が含まれている事があります。こうした競技として不健全な要素を、なるべく排除するためのものになります。
ゲームをなるべく健全な競技として扱えるようにすることで、従来スポーツで言われてきたような精神的充足の価値をゲームの中に見出す事が可能になります。
スポーツの精神的充足の価値としては、京都府の資料に説明を委ねますが(https://www.kyoto-be.ne.jp/hotai/plan-homepage/shiryou1.htm#:~:text=%EF%BC%88%EF%BC%92%EF%BC%89%E3%82%B9%E3%83%9D%E3%83%BC%E3%83%84%E3%81%AE%E6%8C%81%E3%81%A4%E6%84%8F%E7%BE%A9,%E5%8A%B9%E6%9E%9C%E3%82%92%E5%BE%97%E3%81%A6%E3%81%84%E3%81%BE%E3%81%99%E3%80%82)
健全な競技性やチームワークを求められるeスポーツは、身体的な部分以外のメリットがスポーツと共通しています。
単純にスポーツとして捉えることで、eスポーツのプレイ自体を「努力」や「研鑽」と考えることができますし、メタゲームでは利用者同士のコミュニケーションも、必ず専門の職員が同行してプレイを行うようになっています。そこから、対人関係を考えてもらったり社会参画を促したりしています。
eスポーツのデジタル的な価値
eスポーツは、現在の市場規模的な部分やSNS上での盛り上がりが活発なため、既に若年層が持つ関心はかなり大きいものです。しかしながら、就労支援としてeスポーツを捉えるメリットはそれだけではありません。
メタゲームがeスポーツを就労支援として扱う事のメリットとして考えている事は、大きく分けて3つ存在します。
・操作がキーボードとマウス、及びコントローラーのみで完結するため、身体的特徴が影響しにくい方法で行う事が出来る。
・オンライン上で導入出来るため、精神的な参加ハードルが低い。
・PCはゲーム以外の用途で利用できるため、社会参画を考えるきっかけになりやすい。
1つめは、当然ながら身体的ハンディキャップを抱える利用者への社会参画を促す要素になります。メタゲームでも、身体的ハンディを抱える方にもキチンとサポートがある事をお伝えすることで就労継続を促しています。eスポーツの中では、障害者と健常者関係なく実力が拮抗する事も多々あり、eスポーツのプレイ中は真の意味で対等に接することが出来ています。
2つめも、先ほどのポイントと重なりますが、此方は特に精神的な負担を軽減する効果を狙うことができます。既に社会問題化しているひきこもり層へのアプローチの他、精神的問題によって休職等で社会から距離をおいている人たちへの利用を促せます。地方自治体によっては、在宅就労が可能な場合もあるため、家にいながらもオンラインで職員とコミュニケーションの機会を持つ場合もあります。
また、3つ目はeスポーツを就労支援と結びつける為の最も重要なポイントとなります。eスポーツの良い点は、その市場規模にもありますが、さらに注目すべきはその関連事業の多さであるとメタゲームでは考えています。
図1 引用元となっている、経済産業省資料を参照(https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2019FY/030486.pdf)。
上記資料の図のように、eスポーツは様々なお仕事との密接な関わりを持っています。単純にPCに触るきっかけになるので、そこからタイプ入力の訓練や書類制作等を並行して行っても良いですが、特にメタゲームでは動画編集に重点をおいて支援を行っています。
eスポーツは、自分のプレイが画面1枚で完結し、それを丸ごと録画することができます。その影響によって、動画配信サイトを始めとしたSNSでは動画がかなりの比率を占めるため、若年層にとって非常に親しみやすいものになっています。そこから、映像制作や映像編集技術に結び付けることで、eスポーツから就労への意識をスムーズに移行させることが出来ています。
総括
ゲーム依存症は、ゲームをする行為自体が社会生活に支障をきたす場合に初めて認定をされるものです。しかしながら、プラスの側面に目を向けることでゲーム自体を社会参画のキッカケにし、ゲームを依存対象にするのではなく活用する事で「ゲーム依存症対策」をメタゲームでは目指しています。
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